破廉恥となすもの(南ア戦争)

「余の見てもって破廉恥となすもの(南ア戦争)に対し、余にしてもしこれに抗議するがため、この最初の機会はもちろんその他すべての機会をとらえずしてやむならば、余は神及び人の前に立って、自ら一個不忠の卑怯漢《ひきょうもの》たるの感をなさざるを得ぬであろう。されば余は、今夜《こよい》も、ここにあえて抗議する。たといあすからはこのカーマーゼンに一人の友人もなくなろうとも。」[#ここで字下げ終わり] たといすべての同胞をことごとく敵とするも不正不義に向かっては一歩も仮借すべからずというのが、彼の精神であった。しかしながら、彼が猛烈に運動すればするほど、世間の反感もまたますます猛烈になるばかりであった。現に彼自身の選挙区においても、バンゴアという所にて演説会を開きし時のごときは、会館はたけり狂う群集によって絶え間なく攻撃され、彼自身も市街《まち》のまん中で袋だたきに会った。かくのごとくにして彼の不人望はその極頂に達したる時、あたかも一九〇〇年の総選挙が行なわれた。この時ばかりはわずかに残った彼の後援者もほとんど失望の極に陥ったが、さすがは英国だ、この『国賊』この『売国奴』は前回よりも五割以上の投票数を得て、重ねて再選せらるる事となった。[#地から1字上げ](大正六年一月十日)

       二の三

 重ねて議員に再選せられてよりロイド・ジョージは勇気百倍、縦横無尽にその奮闘を続け、かくて翌一九〇一年の十二月には、彼はいよいよキリスト降誕祭の前日を期し、南ア戦争の直接の責任者たる殖民大臣チャンバーレンの郷里バーミンガム市に攻め入るの予定を立てた。そもそもこのバーミンガム市は、チャンバーレンの本営|牙城《がじょう》にして、氏の政敵のかつて足一歩も踏み入るるあたわざりし所である。

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