英国人にとっては縁もなき異国人

[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]* Seligman, The Economic Interpretation of the War, 1915.[#ここで字下げ終わり] 今英国人にとっては縁もなき異国人たる私が、改めて彼らのために説くまでもなく、たとえば『エコノミスト』主筆ウィザース氏がその近業『貧乏とむだ*』の中に詳論せるがごとく、今日英国の本土内においても起こすべき仕事がなおたくさんにあるのである。私はこの物語の上編において、いかに英国民の大多数が貧乏線以下に沈落して衣食なお給せざるの惨状にあるかを述べたが、これら人々の生活必要品を供給するだけでもすでに相当な仕事が残っていると言わなければならぬ。さるにもかかわらず、最も資本に豊富な世界一の富国たる英国において、それらの仕事が皆放棄されたままになっているのは、それら貧乏人の要求に応ずべき事業に放資するよりも、海外未開地の新事業に放資する方がもうけが多いからである。かくて世界一の富国たる英国は同時に世界一の貧乏人国として残りつつ、しかも資本の輸出の競争のために国運を賭《と》してまで戦争しなければならなくなったのである。[#ここから1字下げ、折り返して2字下げ]* Withers, Poverty and Waste, 1915.[#ここで字下げ終わり] 思うにもし英国の富豪ないし資本家にして、消費者としてはた生産者としての真の責任を自覚するに至るならば、ただに国内における社会問題を平和に解決しうるのみならず、また世界の平和をも維持しうるに至るであろう。 これをもって考うるに、ひっきょう一身を修め一家を斉《ととの》うるは、国を治め天下を平らかにするゆえんである。大学にいう、「古《いにしえ》の明徳を天下に明らかにせんと欲する者は、先《ま》ず其《そ》の国を治む。其の国を治めんと欲する者は、先ず其の家を斉《ととの》う。其の家を斉えんと欲する者は、まず其の身を修む。身修まって後《のち》家斉い、家斉うて後国治まり、国治まって後天下平らかなり。天子より以《もっ》て庶人に至るまで、一に是《こ》れ皆身を修むるをもって本《もと》を為《な》す。その本乱れて末治まる者は否《あら》じ矣《い》」と。嗚呼《ああ》、大学の首章、誦しきたらば語々ことごとく千金、余また何をか言わん。筆をとどめて悠然《ゆうぜん》たること良《やや》久《ひさ》し。[#地から1字上げ](十二月二十六日)[#改ページ]

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